写真について語るときに僕の語ること
- yohane83
- 2021年4月12日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年4月1日
イギリスの作家ブルース・チャトウィンが著した『パタゴニア』は、20世紀最高の紀行文学として今もなお色褪せることはありません。それは、紀行文学というジャンルでありながら、まるで小説を読んでいるような重厚な物語と旅の記録が幾重にも織りなされており、それまでの紀行文学とは一線を画しているからです。そのため、本書を「虚構的である」と評価されているのを多く目にします。
虚構的――本来であれば旅の記録を著す紀行文学にとって不名誉な評価として受け取られかねません。確かに本書では、荒唐無稽のようなパタゴニア地域史(それはもはや噂話といってもいいくらい)が多く語られています。しかしながら、それらはチャトウィンが見聞きした土地の物語であり、あくまでも旅の記録の一つに過ぎません。虚構的であるのは、旅の記録とその土地の物語や歴史が入れ子構造になっているため、時間と空間に広がりを感じるからなのです。
実は、写真もそれと同じだと私は考えています。写真は写した空間を永遠に凍結した記録であるのと同時に、空間に含まれている土地やモノ、人に含まれる時間の蓄積をも写し出します。その情報量は、一冊の小説と同等かそれ以上なのではないでしょうか。私は、記録でありながら虚構性を内包していることが写真の大きな魅力であると考えています。
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