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写真は記憶と音楽、そして文学でできている

  • yohane83
  • 2022年7月3日
  • 読了時間: 2分

更新日:2023年4月1日



 


 写真家Trent Parkeは「写真で最も大切なことは記憶である。すべては時間であり、振り返ることのできる瞬間を捉えられたかどうかだ」と、かつてインタビューで語りました。私の写真の根底も私自身の記憶が根ざしており、自己救済を試みるために色褪せた世界を表象しています。私の三十数年という短い記憶の大半は孤独と絶望が占め、また黒いインクが垂らされた水が元の色に戻ることができないように、この先も孤独と絶望が私を黒く染めていくでしょう。



 この宿命的な孤独と絶望の中で私を救済してきたのが音楽と文学です。音楽は中学時代、逃避することのできない暴力によって心が折れかけていた時に、Marilyn Mansonという一人の怪物に救われました。彼の言葉は、当時の私が言えなかったことをそのまま代弁してくれました。それからというもの、私は彼のアルバムを買い漁り、ライナーノーツに登場するバンドをメモして(まだこの頃ネットは身近なものではありませんでした)片っ端から聞いていきました。こうして私の青春はヘヴィメタルとともに過ごしました。



 文学は音楽に救済された時とほぼ同時期に、遠藤周作の『沈黙』と出会い、目覚めました。それからサリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』を愛読し、高校生になってからは村上春樹の作品にのめり込み(今でも村上主義者です)、そして大学生になってからはブルース・チャトウィンとコーマック・マッカーシーの作品に傾倒していきました。



 私の写真は記憶と音楽、そして文学でできています。私の記憶はこれまで出会ってきた音楽と文学とリンクしており、記憶で紡ぎだされた写真はこの二つの上に成り立っているのです。

 
 
 

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